背景と目的
サウナ浴と有酸素運動は、それぞれ心血管機能に影響を与えることが示されている。しかし、サウナ浴単独と運動とサウナの組み合わせが血管系指標に及ぼす影響を直接比較した研究はまだ限られている。そこで、有酸素運動とサウナ浴の組み合わせと比較した場合のサウナ浴の血行動態の変化を探るため、期間を一致させたクロスオーバー試験を実施した。
研究の方法
心血管系疾患を診断されたことはないが、心血管系疾患の危険因子(喫煙歴、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、肥満、冠動脈疾患の家族歴)を少なくとも1つ有する、中央フィンランド ユヴァスキュラ市の参加者72名(男性 39名、女性 33名)を対象とした。
これら参加者を2つの群に分けた。片方は75℃のサウナに30分入る群(SAUNA群)、もう片方は最大心拍数75%のサイクリング運動を15分行い、その後サウナに15分入る群(EX+SAUNA群)。
動脈硬化度、増大指数、上腕収縮期および拡張期血圧、中心収縮期血圧、平均動脈血圧、心拍数の相対的変化を、上記介入前と介入直後、介入前と介入後30分で比較検討した。
結果
介入前-介入直後で、SAUNA群はEX+SAUNA群と比較して、拡張期血圧を2.5 mmHg(95%CI[1.0, 4.1], P = 0.002)、平均動脈血圧を2.5 mmHg(95%CI [0.6, 4.3], P = 0.01)低下させた。
介入前と介入後30分では、EX+SAUNA群はSAUNA群と比較して収縮期血圧を- 2.7 mmHg(95%CI[-4.8, -0.5], P = 0.02), 拡張期血圧を -1.8 mmHg(95%CI[-3.3, -0.4], P = 0.01)、平均動脈血圧を-2.0 mmHg(95%CI [-3.5, -0.5], P = 0.009)低下させた。
その他の測定パラメータに関しては、SAUNA群とEX+SAUNA群で統計学的な有意差を認めなかった。
結論
本研究では、心血管危険因子を有する中年参加者において、持続時間を一致させた場合、EX+SAUNAとSAUNAは同等の急性血行動態変化を引き起こすことが実証された。サウナは、有酸素運動ができない人の急性期血圧低下のための適切なオプションであり、血圧コントロールを改善するためのライフスタイル治療の選択肢となる可能性がある。
私見
サウナ浴単独でも、有酸素運動とサウナ浴を組み合わせたのと同等の血圧低下効果が期待できるのではないか、という論文でした。
有酸素運動のみとの直接比較は行われていませんが、サウナだけでもやっぱり効果はありそう!という朗報です。
あくまで介入直後と30分後の結果なので、長期的な血圧低下効果については述べられていません。
論文中のLimitationにも記載がありますが、この研究の参加者はほとんどがサウナ浴を週1回以上行っているサウナーのフィンランド人なので、非サウナーではより顕著な結果となる可能性がありそうです。
今回の論文:Lee E, Kostensalo J, Willeit P, Kunutsor SK, Laukkanen T, Zaccardi F, Khan H, Laukkanen JA. Standalone sauna vs exercise followed by sauna on cardiovascular function in non-naïve sauna users: A comparison of acute effects. Health Sci Rep. 2021;4(4):e393. doi: 10.1002/hsr2.393. PMID: 34622026.
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